お父さんもお母さんも、選手といっしょに幸せになりましょう! そのためには重要となるのが、日々の親子のコミュニケーションです。コーチングのスキルを具体的に知り、磨いてくことでコミュニケーションも自ずと活発になってくることでしょう。基礎スキルには「傾聴」「承認」「質問」の3つがあることを第1回の連載でお伝えしましたが、今回は「傾聴」について掘り下げます。高価な道具も難しい技術も不要。大切なのは学びの心と実践です。
[監修/諸星邦生]
vol.2
こどもがワクワクして話せるようになるコツ
こどもの話を聞く――。自分はできているという感覚があっても、こどものほうには聞いてくれている、という実感がないケースもあるかもしれません。そもそも「聞く」という行為を、ふだんから意識している大人はあまりいないのではないでしょうか。
書店に足を運んでみると、『聞く力が○○』『傾聴力』といったタイトルの実用書や自己啓発本をよく目にします。これからの社会で活躍していくためには、「聞く」ことを含むコミュニケーションスキルが非常に重要なものとなってくるのだと私は考えています。
話好きなら「聞き上手」に
保護者のみなさんはふだん、我が子とどの程度の会話をされていますか?(話の深さ) また、そういう親子でする会話の比率はどのくらいですか? 深さはなかなか計れませんが、回数だけなら手間でもカウントするのは簡単ですね。
もちろん、会話の数が多ければ良い、という単純なことではありません。大切なのは現状を知ることで、目的はそれを基準として、あしたからの「聞く」に生かしながらトライをしていくことです。
自分から話をするのが好きな子もいれば、控えめで口数が少ない子もいて当然です。いずれにしても、「聞く」側の保護者のカギになるのは「必要な情報を本人から直接に聞けているか」ということです。
会話を好む子であれば、学校や野球での出来事もどんどん話して教えてくれることでしょう。逆に口ベタな子は、保護者のほうから聞き出さないといけないかもしれません。どちらにせよ、問われるのはこどもの言語能力ではなく、話せる・話せないを判定する必要もありません。
我が子が困っていることや悩みごとの有無と、その具体的な中身。保護者にとって特に必要な情報は、そのあたりだと思います。しかし、そういう深層や核心というのは、親が相手でもなかなか表にしないものかもしれません。
話が好きな子の場合、親としての心構えは「聞き上手」になることがポイントになります。
「そうだったんだね」「話してくれてありがとう」など、承認をしながら聞いてあげることを心がけて、話しやすい環境を提供してあげる。こどもは楽しかったこと、うれしかったこと、おもしろかったことを伝えようとする習性があります。その中に「必要な情報」があれば十分ですが、もしもまだ気になることがあれば、簡単に質問してあげてもいいでしょう。
さりげないアプローチも
難しいのは、口数が少ない子の場合ですね。あるいは、学校生活や友人とはよく話をするのに、家庭内では口が重くなる、という子もいることでしょう。そういうご家庭は、保護者のほうの「見守り(承認)」(連載第1回参照)から、再考してみてもいいかもしれません。まずは子どもの承認欲を満たしてあげることが大切。これを頭の片隅に置いた上で、保護者のほうから話を始めるようにしてみてください。
「今日はこんなことがあったよ」「ランチにパスタ食べて美味しかった店があるから、今度いっしょに行こう」など、たわいもないことで構いません。そしてその後に「○○ちゃんは、どうだった?」などと話を振るのがポイントです。
まずは親のほうから、やさしいボールを投げる。こどもがそれを捕れても捕れなくても構いません。そしてまた簡単にできる返球を、それとなく促す。初心者が相手の実際のキャッチボールより、難しくないはずです。こういう言葉のキャッチボールが自然に増えてきて、日ごろのコミュニケーションのリズムができてくると、自分から話をするようになる子もいると思います。
ただし、気をつけたいのは、親のほうが執拗になり過ぎないこと。子どもにボールを投げたからといって、必ずしも投げ返してもらえるわけではないのです。先を急がず、結果や見返りを強く求めず、さりげなく日常のなかで始めていくのがコツ。話すのが面倒くさいなと、こどもに思われてしまっては元も子もありませんよね。
「給食」話はテッパン!?
私の場合は、我が子に毎日の「給食」の話を聞くようにしていました。ヒトにとって食べることは楽しみや喜びであり、学校給食を思い返してストレスが生じるケースはそうないはずです。
実際に「今日はこれが美味しかった」「おかわりした」「あれを残した」などの返事が必ずありました。そしてそこから、会話が発展していくという流れ。このように、普段から話しやすい環境づくりを今でも心がけています。
なお、こどもが話しやすい環境をつくる上でオススメしたいのが『傾聴のスキル4原則』です。うなずき・あいづち・繰り返し・言い換えが4原則となりますが、このスキルについては次回、詳しくご説明したいと思います。
粗探しにならないように!
メンタルコーチングの観点から、保護者のみなさんに特に心がけてほしいのは、こどもの「好き」を伸ばすこと。野球においても同じことが言えると思います。こどもの欠点を見つけるために話を聞き出すのではなく、こどもの可能性や意欲を助長するために話を聞いてあげるのです。
「好きをアウトプットさせる」と言ったらいいのでしょうか。うれしいことや楽しいことを話しているときは、大人でもワクワクしますね。こどもにそのワクワクをさせてあげることが肝心。「成功したからワクワクしたのではなく、ワクワクするから成功する」のです。
親子の会話も「ワクワクするため」と捉えれば、どんどんリズム感が出てきて話が弾むことでしょう。そして胸がおどるような感覚や時間を共有することで、親子関係にも磨きがかかります。いかにして、我が子とワクワクを共有できるか。お父さんお母さんも、まずは息子や娘に合った「聞き方」を考えて、トライをしてみてください。
[野球まなびラボ 理事]
諸星邦生
もろほし・くにお●1978年生まれ、東京都出身。大田区の美原アテネスで野球を始め、6年時から硬式の大田リトル・シニアへ。東海大菅生高で3年夏に九番・左翼で甲子園2回戦まで進出、国際武道大で4年春にメンバー入り。卒業後は保健体育科の教諭となり、東海大菅生高コーチを経て千葉・我孫子二階堂高へ。硬式野球部の監督を20年務めて、2022年夏に(一社)野球まなびラボの理事に就任。ボールパーク柏の葉にて「体軸×野球教室」や「中3塾」を主宰するほか、出張指導やメンタル講座も。1男1女の父
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